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指名も多く、注目を浴びている人気の壁材「そとん壁」。
「そとん壁」は近年、自然素材の家づくりを行なっている多くの設計士・施工店から人気を博している壁材です。開発は高千穂シラス株式会社。シラスからできている100%自然素材でありながら、防水・調湿・防火・吸音など、様々なメリットをもつところが特長です。反面、初期投資としてはサイディングよりも高コストである、ひび割れのリスクがあったりぽろぽろと粉が落ちてくるといったデメリットもあります。
建築家・伊礼智氏が開発に関わっています
そとん壁の開発には、亀山建築のモデルハウスで協働した建築家・伊礼智氏も関わっています。伊礼氏はご自身の設計建築にもこのそとん壁を積極的に採用されており、特に薄いブラウンの「スーパー白洲そとん壁W W-129」は別名「伊礼色」とも呼ばれるほど愛用されています。
伊礼 智
1959年沖縄県生まれ。82年琉球大学理工学部卒業後、東京芸術大学美術学部建築科大学院を修了。丸谷博男+エーアンドエーを経て、96年より伊礼智設計室開設。東京芸術大学美術学部建築科非常勤講師。
そとん壁とは?
そとん壁とはどのような素材でしょうか?しくみや特性をご紹介します。
シラスからできた自然素材
そとん壁は、100%自然素材の火山噴出物シラスを用いた壁材です。シラスとは現在の鹿児島県湾北部を火口とする姶良カルデラの大噴火によって発生した火砕流が堆積した火山噴出物です。シラスは、マグマの超高温で焼成された高純度無機質セラミック物質です。シラスは自然素材であるため、人体に悪影響を及ぼす恐れのある化学物質を出しません。それだけではなく、他の建材や家具から発生する揮発性化学物質を吸着し、再放出しないことがデータで証明されています。
高い防水性と透湿性
そとん壁は超微細な粒子で構成される下塗り材と、粒子の大きめな上塗り材の2層構造になっています。下塗り材は水蒸気の細かい粒子を通しながら、雨水の大きな粒子は通しません。染み込んだ雨水は隙間が細かい下塗り材にはほとんど染み込むことがなく、重力によって下方向に引っ張られながら隙間が大きく抵抗の少ない上塗り材の表面へと流れていきます。これを「くの字流動現象」といいます。この性質からそとん壁は表面に防水塗装をする必要がありません。
また、そとん壁は大きな粒子の層と微細な粒子でできている層に分かれているため、粒の大きな雨水は通さず、粒の小さな水蒸気は透過するという性質をもっています。この性質により、防水性能にすぐれながら、空気を透過する呼吸する壁であるといえます。
土に還る環境にやさしい素材
そとん壁は一切の化学樹脂を使用していません。自然界に存在する安全な素材だけを用いているため、将来の解体時には環境を汚染することなく土に還すことができます。
人と地球にやさしい家づくりの意識の高まりに合わせ、シラス壁への注目はますます高まっています。国内では、環境省のエコハウスモデル事業、国土交通省の長期優良住宅先導的モデル事業、子どもたちが化学物質に悩まされることない街づくりを目的とする産学協同のケミレスタウン®プロジェクトなどにもシラス壁が採用されています。
抜群な風合いのよさ
そとん壁は、周りの景色にすっとなじみ、心地よさを感じさせる独特の風合いや質感をもちます。左官職人により丁寧に施される手づくりの技、継ぎ目のないシームレスな見た目の美しさは、単に環境に配慮した素材というだけでない価値を与えてくれます。
サイディングやモルタルとの違い
そとん壁は、窯業サイディングやモルタル壁に比べて初期費用(イニシャルコスト)が高額となります。
しかし、それらに比べ紫外線や風雨による劣化が起きにくく、無機物で塗料などの樹脂(有機質)と違い養分をとらないためカビが基本的には生えず※、色の退色も起こりにくいといった高いメンテナンス性をもちます。
そのため、ランニングコスト(メンテナンスコスト)が比較的かからない壁材といえるでしょう。イニシャルコストは高くなりますが、長い目で20年、30年…と住み継いでゆくことを考えれば、そとん壁の採用はトータルで賢い選択であるといえるのではないでしょうか。
※埃などが付着することも考えられるため完全に生えないわけではありません